「なあ、ルーシィ、腹減ったー」
「……」
「ルーシィ、なあって。ルーシィー！」
「あーー、もううるさい！さっき食べたばっかでしょう。……今いいところなの、邪魔しないでよ」
「だって、減ったもんはしょうがねえだろ。オレは代謝がいいんだよ、ルーシィと違って」
「失礼ね、どういう意味よ！」
「だって蓄えがこんなに……」
「ちょ、ちょっと、二の腕はやめて、これでも気にして……んっ、もう！そんなにプニプニしないでよ！」
「……いいなーコレ。オレも欲しいな」
「バカなこと言ってないで、狭いからあっちに座ってなさいよ。てか、堂々と人の家のベッドに乗ってくるのやめてもらえるかしら」
「ルーシィがソレ読むのやめるなら離れる」
「……アンタねえ……。はぁ……もう、わかったわよ、ホラ閉じたわよ。これでいい？」
「なんか、これでいい？とか言われると素直に喜びたくねえよな」
「どうしろってのよ！……てか、いい加減二の腕から手を離しなさい。くすぐったいでしょ、ちょ、ホントに……あはっ……やめっ、きゃははは！……もぉ、ナツ！」
「いいだろ別に、この感触クセになるぞ。ホラ、ルーシィも触ってみろよ、気持ちいいから」
「自分の身体なんだから気持ちよくないわよ……あいたっ、こら、噛むな！」
「はぁー、マジでどこもかしこも柔らけえなあ、ルーシィは。蓄え方が違うよな」
「鍛え方が違うみたいに言わないで……あっ、ん……ちょっと、アンタどさくさに紛れてどこ触ってんの……っ」
「いや、すげえなと思って」
「……ナツ、アンタいま、ごく自然にそのボタン外したけど、それ以上やったらいくらあたしでも怒……んんっ」
「おお……おまえ、こんなもん抱えてよく戦えるなあ。ハッピーが『ルーシィは重い』ってよく言うけど、ほれがふぇいいんふぁ（これが原因か）」
「しれっと暴言吐きながら顔を埋めるな！……ひゃ……ちょっと、ヤダ……ナツ！」
「ふあぁー、ルーシィ……めちゃくちゃ柔らけえ……すげぇ、いい匂い」
「あんっ……ちょっ、だから噛み付かないでってば……」
「……あー、コレ邪魔だな、脱げ」
「な、何いってんの、ぬ、ぬぬ脱ぐわけないでしょ！？……って、あれ……？」
「なんか、簡単にとれた」
「あ、そういえば今日は紐……じゃなくて！！……ナツ、あんた……その、どういう、つもりなわけ……？」
「……は？どういうつもりってなんだよ。触りてえから触ってるだけだろ。……まさか、嫌なのか？」
「え……？えと……あ……嫌じゃ、ないわよ……別に……」
「ならいいじゃねえか、減るもんでもなし。ケチケチすんなよ」
「ま、まあ……確かにそうね……。そうなんだけど……」
「だろ？ルーシィだってなんか気持ちよさそうだし」
「きっ……もちよくなんか……あっ」
「気持ちよくねえのか？」
「あ、いや、……ナツに触られると、あったかいし……気持ちいい……かも。でも、あれ……？なんか」
「なんか、なんだよ、ルーシィ」
「あんっ、や……」
「……どっちなんだよ」
「ちょ、ダメ、そんなとこ舐め……ちゃ……」
「ダメなのか？……でもこのままじゃシーツがびしょびしょになっちまうぞ」
「……あ、違う……あ、ん……ダメじゃない……もっとして、ナツ……もっと舐めて」
「てか、おまえ……さっきから、なんかおかしくねえか……？」
「はぁっ……そうね、おかしい……確かに」
「オレ、このままヤッちまってもいいのかよ」
「えっ、そ、そ、そんなの、いいわけないでしょっ……そもそもなんでこんな……」
「……おいルーシィ、全力で否定しながら抱きつくな……腰を、押し付けんな、ぬるぬる滑るから入っ……」
「あぁっ……！」
「っあ……え……」
「ん、はぁ……っ、ナ、ツの……バカ……ふぇっ……」
「おまえ、なっ……言ってることと、やってることが、メチャクチャだぞ」
「あ、あたしだって、わかんないわよ……」
「……」
「……」
「……痛く、ねえか……？」
「い、痛いに、決まってるでしょ……っ、ふぁ……でも、思ったより……痛く、ない……かも」
「で、オレは、もう既にかなりキてるわけだけど……動いて、いいのかコレ」
「だ、だめ……っ」
「……じゃ、ねえんだろ、どうせ」
「……ダメじゃ……ない……あっ……ナツ」
「はーっ、ルーシィ、これ、マジ、やば、い……」
「あ、あ、や……っ、ナツ、あ、たしも、もう」
「！？」
「あぁっ……」
「っは……あっ……」
「……」
「ハァッ……ハァッ……」
「…………ふぇ……」
「……マジかよ」

◆

「で？」
「……今、話した通り……です……」
「……要するに、いつもの流れでじゃれてくるナツをあしらってたら」
「……うん」
「全然そういう雰囲気でもなかったのに」
「……うん」
「いつの間にか、身体中撫で回されて」
「……うん」
「うっかりエッチしちゃってたわけ」
「……う、ん」
「お互い、初めてだったのに？」
「……うん」
「付き合ってもないのに？」
「……うん」
「その一回きり？」
「い、や……あの日以来、毎日……というか、隙あらば……というか……」
「はぁー、あきれた……まあ、あんたららしいっちゃらしいけど」
「うぅ……どうしようカナ……。なんか変なのよ……！最近あたし、ナツに強く迫られると全力で肯定しちゃうの」
「んー、なんか変な薬でも盛られてたんじゃないの？」
「！？」
「まあ、ナツにそんな姑息なこと考える脳はないか」
「そ、そうよ！いくらなんでもナツがそんなことするはずが……」
「……てか、ルーシィ」
「は、はい！」
「あんた……男日照りの私にこんな相談するなんていい度胸だね。……責任持ってアドバイスしてやるからちゃんと言うとおりにしなよ？」
「……（ひぃぃ〜……）」

◆

「……おかしいわねえ、たしかここに置いたと思ったんだけど」
「どうしたんだ？ミラちゃん」
「あらグレイ、ちょうどよかった。この棚にあった本を知らない？」
「いや、オレは知らねえな。……ん、待てよ、そういや何日か前にルーシィが珍しい本を見つけたとか言ってたけど、ひょっとしてあれか？」
「それって、青い表紙で金の縁取りの装丁だったかしら」
「おお、まさしくそれだ。そこのテーブルで熱心に読んでたぜ。そういや、続きがどうしても気になるからって持って帰ってたかもな。……そんなに大事な本だったのか？」
「ううん、それはいいんだけど……そう、ルーシィが読んじゃったのね」
「……意味深だな、ただの本じゃねえのか？」
「……誰にも言っちゃダメよ？あの本はね、魔法書なの。内容は読む人によって変わるわ。ルーシィが読んだならすごく面白い冒険ファンタジーとかだったかもしれないわね」
「ふむ、読む人の好みに合わせて、データベースから内容を引っ張ってくるような魔法か？ヒビキの古文書（アーカイブ）みてえな……」
「うふふ、ちがうのよ。本の魔法は『自己暗示』よ。実は内容はあまり問題じゃないの。あれを開いて読み進んでしまった時点で、読者は既に暗示にかかっているわ。思い込みや想像力次第で、物語の内容も大きく変わってくるってわけ」
「なるほど、便利なもんだな。バカでも楽しく読める本ってわけだ」
「まあそうなんだけど……。実は、あれ欠陥品でね」
「……おい、なんかその流れ……前にもあったな……」
「本を閉じてからも、しばらくの間、自己暗示の魔法が継続してしまうらしいのよ。あくまで本人の意思に従うものではあるけどね」
「つまり、ルーシィは……」
「本心をさらけ出した上、すごく洗脳されやすい状態になってしまってたってことね」
「……」
「そういうわけで、あれは返品しなきゃいけないの。あとで理由を話して返してもらうわ」
「あ、ああ……。ホドホドにな、ミラちゃん……」
「うふふ、まあ、あの様子だと……結果オーライだったかしらね」

◆

「ルーシィ、なあルーシィ、オレ腹減ったぞ！」
「オイラも！ねえルーシィ、今日は魚あるー？」
「……う、うるさい！！近寄らないで！！」
「……なに怒ってんだ？あいつ」
「顔真っ赤だね。タコのものまねじゃない？」
「そんなわけないでしょーーっ！！」