ハッピーの目には、ここ最近のナツの精神状態は、以前に比べ格段に安定して見えた。
エルフマンたちと一緒に沼の魔物討伐の仕事から戻って以来、彼のただならぬ様子を最初に察知したのはハッピーだった。
『なにがあったかを話すつもりはないみたいだ』
一人になりたいと言うナツに黙って部屋を明け渡し、ルーシィのところへ訪ねてきたハッピーがポロリとこぼしたことがあった。何かから逃れるように塞ぎこむ少年の姿を間近で見ているのは辛い。だからこそ、ルーシィが家へ来るようナツに声をかけてくれたことがきっかけで、彼が少しずつ元気を取り戻していくのが嬉しかった。
(そうは言っても……)
その代わりというかなんというか、ここ最近のナツのルーシィに対する執着はエスカレートする一方だった。そのあまりに直球な愛情表現はいちいちからかってやるのも馬鹿馬鹿しくなるほどだ。
(当の本人たちが全く気づいてないってのもすごい話だけどね……)
「……今日も仕事に行かないの、ナツ」
カップに入ったカボチャのスープを木のスプーンでいたずらに掻き回しながら、さりげない様子問いかけてみる。
「んー、行かね」
ルーシィに促され渋々ギルドに顔を出したナツだったが、仲間への挨拶もそこそこに、着くなり奥のテーブル席にどっかりと陣取り、こうして一日中特になにをするでもなくだらだらと時間を過ごしている。その視線の先を追うのにも、もういい加減飽きてしまった。
「ナツってば、あからさますぎるよ。見てるこっちが恥ずかしいくらいだ」
「あ?なんか言ったかハッピー」
「別になんでもないよ」
大魔闘演武が終わってからというもの、閑散としていたここ妖精の尻尾には、以前では考えられないほど多くの人間が出入りするようになっていた。入門を希望する魔道士はもちろん、観光目的に地方から訪れるものも少なくない。おかげでマスターやミラジェーンはそれぞれ訪問者をさばくのに手いっぱいだ。
ルーシィが今日、朝からギルドのホール内を忙しく駆け回っている理由は、私用で外出するというリサーナの代わりにミラジェーンを手伝ってほしいと頼まれたからだった。いつもより動きやすい格好をしてはいるものの、露出は相変わらずだ。腰に巻かれたエプロンくらいでは身体のラインを覆い隠すまでに至らない。
「知らねえ奴相手にニコニコしやがって……。何がそんなに楽しいんだか」
苛立ちを隠そうともせずブツブツと恨み言をくり返す相棒を呆れたように一瞥するが、ナツはそれを気にもとめない。ハッピーはテーブルを降りるとちいさくため息をついて席を離れた。
「やっと顔を見せたと思ったら、ずいぶん不機嫌なのね、ナツ」
少年が全身で発している負のオーラに全く臆することなく声をかけたのは、仕事が一段落した様子のミラジェーンだった。
「別に不機嫌じゃねえ」
「そうかしら、そんなに眉間にしわ寄せて難しい顔しちゃって」
「……オレだって、いろいろ考えることがあるんだよ」
「あら、ナツが考え事なんて珍しいわね。私でよければ相談にのるわよ」
薄いブルーの瞳に覗きこまれて、ナツはうっと呻いた。
「ねえ?ナツ」
ミラジェーンにこれをやられると隠し事はできない。
子供の頃から、たとえばなにか悪戯が見つかったりした時、ナツがどんなに頑なに口をつぐんでも、最終的には当時から最恐にして最強だったこの魔人に力づくで白状させられる羽目になった。そのせいか、今となっても彼女の要求を拒否することは難しい。条件反射のようなものだ。
「いや、その……ルーシィの、ことなんだけどよ」
「うふふ、そう、ルーシィの」
ミラジェーンの完璧な笑顔が邪悪に歪んだように見えたが、それはほんの一瞬のことだった。ナツはたどたどしくも考え事の内容について"相談"しはじめた。
その夜、ルーシィはいつもより早い時間に寝支度を始めた。
「はい、あんたたちもう帰ってね。あたし今日はめちゃくちゃ疲れてるの」
「えー」
「えー、じゃない。ほら、もう寝るから、さっさと出てって」
ご丁寧にドアを開け放ちアゴで帰るよう促され、ふたりはすごすごと家路へついた。
運河沿いの石畳をゆったり歩きながら、ハッピーは隣りの少年を見上げた。
「ねえナツ、何考えてるの?」
大した不満も漏らさずに、素直にルーシィの言うことをきいているナツを変に感じたのはもちろんだったが、なんだか彼が少し楽しそうな表情をしているように見えたのだ。
「んー、いいこと」
予想外の返事にハッピーはきょとんとする。
「なにそれ、オイラにも教えてよ」
「そうだな、明日になったら教えてやる」
ナツはそういって豪快に笑った。彼のそんな笑顔を見たのは本当に久しぶりだった。ハッピーはすぐにそれがルーシィに関することだとピンと来て、余計に嬉しくなった。
――もし、ナツが今夜も夜中に抜け出したら、明日はひとりで昼までのんびりするとしよう。
(オイラ、空気は読める猫だからね)
いつも見ている通い慣れた景色のはずなのに、月明かりが水面に反射して辺り一帯がうすぼんやりと銀色に光っている様子が、なぜか今日は特別綺麗に思えた。
翌朝、空っぽの寝床を見つけたハッピーは、その場でひとり含み笑いをしたあと、やはり我慢できずにルーシィのアパートを訪れた。
普段通りこっそりと窓から中を覗く。と、ベッドの中で抱き合うようにして眠るふたりの姿があった。それは明らかにいつもとは違う様子で、とてもじゃないが割り込める雰囲気ではない。ハッピーは悪いことでもした気分で大慌てで引き返すと、その時のことは見て見ぬふりをしようと決めたのだった。
◆
ミラジェーンの助言は間違ってはいなかった。
ナツは、仕事のパートナーとしてルーシィを選んだ時から今まで、彼女に対するスタンスを変えたつもりはなかった。当然、数々の仕事を共にこなし、お互い助けあってたくさんの危機を一緒に乗り越えてきたという意味では、ふたりの間にある絆はとても強く、大きなものだった。しかしそれは、ハッピーやグレイやエルザに対して思うものと同等でなければならない。
「ルーシィは、オレが毎日部屋にいても怒らねえんだ。まあ、文句は言うけどよ」
「そうね」
少年の話を聞きながら、ミラジェーンはにこにこと相槌を打った。
「ハッピーと二人で、冷蔵庫に入ってたあいつの"とっておき"を食っちまった時だって、オレたちを追い出したりしなかったんだ。涙浮かべて悔しがってはいたけど」
「ひどいことするわね」
「……それによ、風呂を覗いても、ベッドに潜り込んでも、寝てる時に×××したり、××××したりしても、あいつ絶対に本気で嫌がらねえ」
「あらあら。×××とか××××は、本人が気づいてないだけだと思うけど……ナツったらそんなことしてたのね」
ミラジェーンは特に表情を変えることなく、それでも少し驚いてみせた。
「……ルーシィが自分をどこまで受け入れてくれるのかを探ってでもいるつもりなのかしら?」
その言葉にナツはちょっとムッとして、ミラジェーンをキロリと睨む。
「別に試してるつもりなんかねえ。そうしたいと思ってるからしてるだけだ」
「ふふっ、じゃあ悩むことなんてないじゃない。ナツは今のまま、ずっとルーシィのそばにいたいんでしょう?」
「"どうして毎日毎日ウチにくるわけ?"って聞かれたんだ。ルーシィに」
ミラジェーンは一瞬ちょっと意外そうな顔をしたあと、ふぅっと息を吐きだすと、小さくつぶやいた。
「……じれったいわねえ」
当然ナツの耳にははっきりと聞き取れた。
「ナツがルーシィを"大切な仲間"で"守りたい"って思っているのと同じように、ルーシィもナツに対してそう思っているんじゃないかしら。……もし、ナツが望んでいるのがそういうことでないのなら、ちゃんと伝えなきゃね」
いざ想いを伝えようと思っても、タイミングとか雰囲気とかいろいろあるんじゃないか、なんてガラにもなく考えていたのがウソのように、ルーシィはごく自然にナツを受け入れた。
もやもやしていたものが胸の内からすっとなくなってしまえば、あとはそれこそ簡単なことで、ナツは普段どおり感覚の赴くまま、自分をコントロールすればよかった。
ルーシィの感じていることがそのまま跳ね返ってくる。おそらくルーシィも同じ感覚に身を委ねている。
それは大きな幸福感だった。今まで心にあった不安や焦燥や、隠してしまいたい影の部分をすべて飲み込んで満たしていく――かのように思えた。
「……!」
突然、耳のうしろからピシリと音がして、目の前がふっと真っ暗になった。続いて闇の真ん中に亀裂が走り、ばらばらと崩れて不自然な形に裂け目を作る。
その隙間が蛍光の緑色に発光しはじめた。眩しくて思わず目を閉じかけてハッとする。
「あ……」
手が見えた。人間の手だ。こちらへ向かって必死で腕を伸ばし、何かをつかもうともがいている。
――いやだ。
その手が誰のものか、ナツにははっきりとわかっていた。
ごぼごぼと気泡が上がっているのが見える。蛍光色の水は少しずつ黄からオレンジ、赤へと色を変え、さらにだんだん濁ってきて透明度が失われていく。手はその中で弱々しく漂うが、いまはもう指先が少し動いているだけだ。
――いやだ、だめだ。やめろ。
ナツは金縛りにあったように動けない。息もできなくなった。
「リサーナ」
声を絞り出すが、届かない。もう、遅い。
絶望感で身体の力が抜けたと同時に、亀裂の隙間から目にも留まらぬ速さで無数の触手が跳び出し、ナツの四肢に絡みついた。続いて数本の鋭い先端が肩と胸を貫通した。抵抗はしなかった。触手は容赦なくナツの左腕を引きちぎり、右足に順番に巻きついて骨を細かく粉砕した。耳の穴から侵入した一本は中で分裂しあちこちに蠢きながら脳をズタズタにした。別の数本が腹の皮膚を破り内臓を食い荒らした。喉をギリギリで締め付けられ、気絶も許されない。
だが、ナツにとってはこんな明らかな空想における痛みなんかよりも、触手たちの間からじっとこちらを見据えている、銀髪の少女の眼が恐ろしかった。
――私を、守ってくれるって言ったくせに。
まるで、そう訴えかけられているようだった。
昼過ぎに目を覚ました後も、悪夢から逃れた安堵は一向に訪れなかった。
あれは夢であって夢ではない。向き合うべき闇をどこかへ追いやって、見て見ぬふりをしようとしたことを恥じなければならない。あれは、警告だ。
隣りで眠るルーシィを起こさないようにナツはそっとベッドを抜けだした。
でも…気になるのが、寝てる時の×××や、××××、
な、何ですか?あれ。
私的には…………ぐふふ。な妄想なんですけど。
出来れば、教えて下さい!あの、ストレート
じゃなくても良いので!よろしくお願いします!
変なところに、興味しんしんでごめんなさい!
いらっしゃいませ。
後半のナツはちょっと大変なことになってますが、あくまで自己嫌悪が投影されただけの
ただの悪夢という設定ですので、彼の左腕はちゃんとありますしお腹から腸がはみ出したりは
していませんご安心ください。
今回のお話は、第三話 ナイトメアにて、ルーシィ目線で書かれていた告白?シーンの回想を
ナツ側の立場からご覧いただく、という感じになりました。あのときのナツのセリフの意味が
おわかりいただけたかと思います。
寝てる時の×××や××××に関してですが、これは読んだ方のご想像にお任せいたします。
とてもじゃありませんが、このような場所で説明できるような内容ではございませんので
どうかご勘弁ください。というのは嘘で、実は特に考えてませんでしたすみません。
コメントありがとうございました。
次回も是非読みにいらしてくださいね。
やっぱり木綿さんすごいな〜。
いつも楽しみにしていますよー♪
ナツ、メンタル不安定ったらないですね。
ルーシィの初めてが…ナツの心中がこんなだなんて、なんかルーシィが不憫。
てか、ナツルー離れ進行中なんですか…?
寂しいこと言わないで下さいよぅ。…とか言いつつ、あたしも若干…。
木綿さんの文章で萌えキープしていたので、あんまり読めないとFT離れが加速しちゃうかも?
しつこくチェックしていくんで、また気分が乗ったら更新お願いしますね。
お疲れさまでした(^-^ゞ
いらっしゃいませ。
更新が滞っているにも関わらずいらしてくださって嬉しいです。
こんな中途半端な状態で放置されて、さぞかし皆さんお怒りだろうと怯えて日々を過ごしております。
というのは嘘ですが、楽しみにしているなんて言われてしまうと、ついついやる気が出てしまいますね。
私はどうも好きなキャラクターをメチャクチャにしてやりたい欲にかられやすいことに最近気づきました。
公式ナツが基本脳天気で最強で決して後ろ向きにならないタイプの、いわゆる主人公丸出しキャラなせいで余計に
実はその心の裏では緻密な計算や弱さや欲望が渦巻いているに違いない、否、そうでなければあかん、あかんでぇー!
と、私に思わせてやまないです。
マインド・リフレクトもそうでしたが、ボロボロになったナツはつけいるスキも満載です。やりたい放題です。
確かにルーシィは不憫でしたね……、すまんルーシィ。それ以前にすまんリサーナ……。
ナツルー離れが進行中といいますか、実際のところ興味がなくなったとかそういうことじゃないんですが
今私の脳が別のことに夢中になっておりまして、妄想力がそこまで回らない、というのが正しいですね。
Twitterでは落描きですがナツルー絵も定期的にあげてますし、お話の続きも近いうちにアップ出来たらいいなと
思っておりますので、懲りずにチェックにいらしてくださいね。
コメントありがとうございました!
教えてぇ〜
届いた商品は説明どおりで、どちらかと申しますと、お聞きしていたより美品です。
ランクは厳しめに付けられているのだと思いました。こんなに満足できるショップは初めてです。
中古のバッグを購入するのは初めてで戸惑いもありましたが、また是非購入させていただきたいと思います。ありがとうございました。
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